実際のヒット曲で学ぶ音楽理論だよ!キミの音楽理論で整理した武器で楽曲を分析し、得られた知見をキミの音楽理論にフィードバックしてレベルアップいくんだ!
コード進行は「楽曲情報」ウィジェットで好きな調に移調できるから、分析やコピー演奏の際の参考に活用してみてね!
過去に耳コピ+分析した作品たちは カテゴリ検索 または 目次(手動更新のため不定期) から参照できるよ。それではいってみよー!
目次
楽曲情報
さて、今回の楽曲分析の題材は アーティスト RADWIMPSの 作品名 『愛にできることはまだあるかい』 だよ!新海誠監督の映画『天気の子』の主題歌だね。
MVは一発録りの中、天気が曇りから雪から雷雨と経て光が差し込むラスト、と変わっていくという素晴らしい表現作品。
映像と音楽がリンクするようなところもあり、凄く最高なMVになってるよ!
調は Aだよ。♯が3つ、ファとドとソにつく調だ。
要点
素敵だった点を先に書くとこんなところだよ。
- 曇り(低いピッチ)から入るイントロ
- 終止ゆりかごのようなLovin’ You進行×センターメロディで情景感
- 音量、音数、テンション変化で情景が連続しつつも些細な変化
- ♭×2→♭×3→元の調と大きく羽ばたく展開の大サビ
- ミクソリディアン の大きく広がる景色とMVの差し込む光のシンクロ
コード進行
導入
N.C
Aメロ1(@1コーラス) 0:11~
“何も持たずに” から
① | ⅣM7 Ⅲm7 | Ⅱm7 Ⅰ
②~④は①に同じ
間奏1(@1コーラス) 0:38~
コーラスの“ハッ” から
① | ⅣM7 Ⅲm7 | Ⅱm7 Ⅰ
② | ⅣM7 Ⅲm7 | Ⅵm7 Ⅴadd11
Aメロ2(@1コーラス) 0:52~
“支配者も神も” から
① | ⅣM7 Ⅲm7 | Ⅱm7 Ⅰ
②~⑧は①に同じ
Bメロ(@1コーラス) 1:45~
“愛にできることはまだあるかい ” から
① | ⅣM7 Ⅲm7 | Ⅱm7 Ⅰ
② | Ⅰ/Ⅲ Ⅳ | Ⅴsus4 Ⅴ (2拍)
③ | Ⅰ | Ⅰ Ⅴ
サビ(@1コーラス) 2:05~
“君がくれた勇気だから” から
① | ⅣM7(9) Ⅰ/Ⅲ | Ⅴ Ⅵm
② | ⅣM7(9) Ⅰ/Ⅲ | Ⅱm7 Ⅰ
③ | ⅣM7(9) Ⅰ/Ⅲ | Ⅴ ♯Ⅴdim Ⅵm7 Ⅴ
④ | ⅣM7(9) Ⅰ/Ⅲ | Ⅱm7 Ⅰ
“愛にできることはまだあるかい ” から
⑤ | ⅣM7(9) Ⅰ/Ⅲ | Ⅱm7 Ⅵm7
⑥ | ⅣM7(9) Ⅰ/Ⅲ | Ⅱm7
間奏2(@1コーラス) 2:44~
① | Ⅳ Ⅲm7 Ⅴ ♯Ⅴdim7
② | Ⅵm7 Ⅴ Ⅳ Ⅴ
③ | Ⅳ Ⅲm7 Ⅴ ♯Ⅴdim7
④ | Ⅵm7 Ⅴ (2拍)
⑤ | Ⅱm7
⑥ | Ⅱm7/Ⅴ Ⅴ7
Aメロ(@2コーラス) 3:04~
“運命とはつまり” から
① | ⅣM7 Ⅲm7 | Ⅱm7 Ⅰ
②~⑧は①に同じ
Bメロ(@2コーラス) 3:57~
“愛にできることはまだあるかい” から
① | ⅣM7 Ⅲm7 | Ⅱm7 Ⅰ
② | Ⅰ/Ⅲ Ⅳ | Ⅴ
③ | Ⅰ | Ⅰ Ⅴ
サビ(@2コーラス) 4:16~
“君がくれた勇気だから” から
① | ⅣM7(9) Ⅰ/Ⅲ | Ⅴ Ⅵm
② | ⅣM7(9) Ⅰ/Ⅲ | Ⅱm7 Ⅰ
③ | ⅣM7(9) Ⅰ/Ⅲ | Ⅴ ♯Ⅴdim7 Ⅵm Ⅴ
④ | ⅣM7(9) Ⅰ/Ⅲ | Ⅱm7 Ⅰ
“愛にできることはまだあるかい” から
⑤ | ⅣM7(9) Ⅰ/Ⅲ | Ⅱm7 Ⅵm
⑥ | ⅣM7(9) Ⅰ/Ⅲ | Ⅱm7
大サビ 4:57~
“何もない僕たちに” から
① | ⅣM7(9) Ⅰ/Ⅲ | Ⅱm7 Ⅵm
② | ⅣM7(9) Ⅰ/Ⅲ | ♭Ⅲ6 ♭ⅥM7 Ⅰ/Ⅴ Ⅴ
③ | ⅣM7(9) Ⅰ/Ⅲ | Ⅴ ♯Ⅴdim Ⅵm Ⅴ
④ | Ⅱm7 Ⅲm7 | ♭ⅢM7add13
⑤ | Ⅴ
大サビ後間奏 5:28~
“答えてよ” から
① | Ⅳ Ⅴ Ⅵm | Ⅰ/Ⅲ Ⅱm/Ⅳ Ⅰ/Ⅴ Ⅴ
② | Ⅳ Ⅴ Ⅵm | Ⅰ/Ⅲ Ⅱm/Ⅳ Ⅰ/Ⅴ Ⅴ
③ | Ⅳ/Ⅵ Ⅴ Ⅳadd9 Ⅳadd(9,13) | ♭Ⅶ
Aメロ(@ラスト) 6:02~
“愛の歌も歌われ尽くした” から
① | ⅣM7 Ⅲm7 | Ⅱm7 Ⅰ
②~④は①に同じ
サビ(@ラスト) 6:30~
“愛にできることはまだあるよ” から
① | ⅣM7 Ⅲm7 | Ⅱm7 Ⅰ
② | Ⅰ/Ⅲ Ⅳ | Ⅳ/Ⅴ Ⅰadd9
分析・解説
全般
構成:展開を求めない展開
勝手にAメロ、Bメロ、サビとか分けちゃったけど、これは聴く人によっては分け方違うだろうね。いわゆる分かりやすい「Aメロ→Bメロ→サビ」みたいなパートの壁がない。大サビ以外全部Aメロって言う人もいるかもね。
- 聴く人によってAメロ、Bメロの捉え方が違う
- 連続して切れ目のないパート、いつのまにかサビへ変化
なんて、まるで
- 見る人によって晴れ、曇りの捉え方が違う
- 連続し切れ目のない空、いつのまにか晴れに変化
のように空の天気を見てるようだ。
コード進行:ゆりかごのように穏やかな4321
この作品は概ね全般
ⅣM7 Ⅲm7 Ⅱm7 Ⅰ
または
ⅣM7 Ⅰ/Ⅲ Ⅱm7 Ⅰ
で進行する。このコード進行は気分を荒立てることなく優しく体を揺らすくらいの心地のいい進行。
- 順次進行(数字の隣に移動する進行):スムース
- サブドミナントからのトニック:優しさ
- 下がるベース:ベースが下がると気持ちがサガる(落ち着く) ※いつか記事化予定
の合わせ技的な心理。誤解を恐れずに言うと、ドラマティックさを求めない流れ、背景や空間として心の中の景色に溶け込む流れになっていると思う。
僕はこれをLovin’ You進行って呼んでるよ。この作品は聴いたことある人多いんじゃないかな?
導入
サウンド:曇り陰った情景
冒頭のハーモニー、実はその先のパートに比べるとピッチがかなり低くなってる。どう考えても意図して下げたと思うピッチ、これは曇りを表現してるのかな。
実際ピッチを下げたことによって、そこからリバース音が入った後の
何も持たずに 生まれ堕ちた僕
愛にできることはまだあるかい / RADWIMPS
と来た時のすっと微かな光が差し込んだ感が凄い。光芒のようだね。

Aメロ(共通) 0:11~ほか
メロディ:センタートーンに寄りそうメロディ
Aメロ全般に言えるのは、メロディが似たメロディのまま突き進んでいるってこと。そしてそのメロディは
ⅰ
の音を中心にまとわりついている。この音は何かというと、この作品の トーナルセンター の音、センタートーン。
メロディは大きく分けて3種類あって
- センターに寄りそうメロディ
- コードに寄りそうメロディ
- 上記以外のメロディ
っていう3つの組合せ。まぁ賢い人は気づくと思うけど3つ目に『上記以外』って書いてる時点で全体網羅する間違いない分け方だね、ずるくてごめんw
で、1であればあるほど空間に寄りそう穏やかさがあり、2であればあるほど展開があるドラマティックさがあるって思ってる。
この作品のAメロは組み合わせと言うよりも、終始1に徹して空気のように空間をふわふわ穏やかに浮遊してる感じがする。キミにはどう聞こえる?
間奏1 0:38~
コード進行:先へと誘導する間奏とドミナント
① | ⅣM7 Ⅲm7 | Ⅱm7 Ⅰ
② | ⅣM7 Ⅲm7 | Ⅵm7 Ⅴadd11
コーラスの「ハッ」というウィスパーが心地よい空気を醸し出してる間奏。ここの後半②はこれまでとは違うコード進行が出てくる。
②の2小節目で一旦トニック
Ⅵm7
まで到達・行ききってからのドミナント
Ⅴadd11
で、この先への続く流れに勢いを少しつけてる。ここではドミナント真正面のきつさをテンションで中和してるね。テンションノートが正に
センタートーンのⅰ
なので、景色に溶け込んでる。
さぁ、振り子のように少し加速つけてから続きのAメロだ!
Aメロ2 0:52~
編曲:少しずつ増えていくリズム系音色
間奏での振り子エネルギーと、少しづつ増えていくリズム音色(①~④はミュート気味のベル、⑤~⑧はハイハット)が少しづつ僕らの心に煽りを入れてくる。
Bメロ 1:45~
コード進行:駆け上る景色と345順次進行
① | ⅣM7 Ⅲm7 | Ⅱm7 Ⅰ
② | Ⅰ/Ⅲ Ⅳ | Ⅴsus4 Ⅴ (2拍)
③ | Ⅰ | Ⅰ Ⅴ
冒頭の導入やサビで聴く、本作品タイトルの「愛にできることはまだあるかい」がさりげなく歌われる。「え?サビ来た?」っていうわけでもなさそう。
この作品のメインだと思っていた大事な大事なキーワードをサラッと提示してしまうこの特別感のなさを感じるね。日常感というか。
①はまさにここまでのAメロと同じ進行だから、空のように切れ間がない連続した世界感を感じる。そんな中②のコード進行がこれまでとは違う形だ。
このコード進行は、さっきのAメロのLovin’ You進行の効果に書いた『ベースがサガると気持ちがサガる』の真逆で徐々にアガる進行。
- 順次進行:スムース
- 上がるベース:ベースがアガると気分がアガる(高揚) ※これもいつか記事化予定
これを組み合わせたような効果を感じるなぁ。キミはどうかな?
花ハ踊レヤいろはにほの分析記事で書いたのは2からスタートの順次進行上行(右図のイメージ)、徐々にゴールに向けて駆け出していくような感情を高揚させていくイメージだったけど、今回はこれを3から始めた形で、最後のコードが一度
トニックのⅠ
に達する、サビ前に一度到達を感じる形だね。
人によってはこのパートはAメロのままって言うかもしれない。それでもいいんだけど、僕がここをBメロとよんだのはこの「目的/ゴール(サビ)に向かいますよ」の演出が理由だよ。
このパートからキックが入ってきていて、ますますサビに向かう最終ラストパートって感じだ!
サビ 2:05~
コード&メロディ:主役にならない影Ⅵm
① | ⅣM7(9) Ⅰ/Ⅲ | Ⅴ Ⅵm
② | ⅣM7(9) Ⅰ/Ⅲ | Ⅱm7 Ⅰ
③ | ⅣM7(9) Ⅰ/Ⅲ | Ⅴ ♯Ⅴdim Ⅵm7 Ⅴ
④ | ⅣM7(9) Ⅰ/Ⅲ | Ⅱm7 Ⅰ
似たようなコード進行が続く中、①は
Ⅵm
に1度落ち着く。このⅥmは終止感あまりないように聞こえるけど、キミの心にはどう響いてるかな?
そして③に関しては、
♯Ⅴdim
で背景スケールが短調の ハーモニックマイナー にまで行っちゃってる。もうこれは短調に半分裏返ったような状態だけど、それでもなお最後の1拍で
Ⅴ
を経由してⅰ中心の調性にしがみついている。
構成:引き込む省略
⑤ | ⅣM7 Ⅰ/Ⅲ | Ⅱm7 Ⅵm7
⑥ | ⅣM7 Ⅰ/Ⅲ | Ⅱm7
そしてサビの最後は2拍前倒して、サビを言い終わらないうちに間奏突入。次へ次へと引き込む展開
間奏 2:44~
① | Ⅳ Ⅲm7 Ⅴ ♯Ⅴdim7
② | Ⅵm7 Ⅴ Ⅳ Ⅴ
③ | Ⅳ Ⅲm7 Ⅴ ♯Ⅴdim7
④ | Ⅵm7 Ⅴ (2拍)
⑤ | Ⅱm7
⑥ | Ⅱm7/Ⅴ Ⅴ7
コードの変遷がこれまでのテンポの倍になってる。大きく心の中を揺さぶるエネルギーがあるね。そんな中で
♯Ⅴdim7
を経由して ハーモニックマイナー へも顔を出す。切なさをほんのり漂わせる演出だね。
大サビ 4:57~
① | ⅣM7(9) Ⅰ/Ⅲ | Ⅱm7 Ⅵm
② | ⅣM7(9) Ⅰ/Ⅲ | ♭Ⅲ6 ♭ⅥM7 Ⅰ/Ⅴ Ⅴ
③ | ⅣM7(9) Ⅰ/Ⅲ | Ⅴ ♯Ⅴdim Ⅵm Ⅴ
④ | Ⅱm7 Ⅲm7 | ♭ⅢM7add13
⑤ | Ⅴ
個人的には♭って世界観を広げる方向のイメージがある。異名同音シリーズでも触れたとおり、♯が感情を尖らせて(シャープにして)♭が感情を平坦にする(フラットにする)聴感。
さて、大サビパートはまさに世界を広げるパート!詳細に見ていくよ。
センター遷移:問いかけのメロディ
① | ⅣM7(9) Ⅰ/Ⅲ | Ⅱm7 Ⅵm
①の最後はこれまでは
トニックのⅠ
だったけど、代わりに
Ⅵm
になっている。歌詞の問いかけの気持ちにあっていてすっと来るね。
コード進行/背景スケール:2つの世界の小旅行(♭2→♭3→元)
② | ⅣM7(9) Ⅰ/Ⅲ | ♭Ⅲ6 ♭ⅥM7 Ⅰ/Ⅴ Ⅴ
②の後半、おやおやってコードがあるね。さて難しいところ、ダイアトニック外の動きを紐解こう。ここは人に寄って2つの解釈に取れると思うから、どっちに聞こえるかキミの心に訊いてみてね。
A.コード理論的考察
まず簡単な解釈(コード理論系)。小節跨ぎの
Ⅰ/Ⅲ → ♭Ⅲ6
の後者のコードは、同主調の
Ⅰ6
って考えられて、その後の進行
♭Ⅲ6 → ♭ⅥM7
は、その同主調内での
Ⅰ6 → ⅣM7
のコード接続になる。
B.背景スケール分析的考察
続いてもう1つの解釈の方(背景スケール分析系)、これは心の背景スケールの慣性の法則(※別途記事化予定)に基づいた考え方だよ。
まず、キミは元のキーのメジャースケールの中にいる(=心が元のキースケールに満たされている)状態だ。そこに飛び込んできた音=
♭Ⅲ6={♭ⅲ、ⅴ、♭ⅶ、ⅰ} の ♭ⅲ、♭ⅶ
が心の背景スケールを上書きして、3番目と7番目が追い出されたスケールはこうなる
ⅰ、ⅱ、♭ⅲ、ⅳ、ⅴ、ⅵ、♭ⅶ
これはつまり、長2度下のキーのメジャースケール
ⅰ、ⅱ、 ⅲ、ⅳ、ⅴ、ⅵ、 ⅶ
と同じ音階だね(ルビの実音見比べてね)。つまり長2度下の調への小旅行が始まった。そしてその後さらに元のキーで言うところの
♭ⅥM7={♭ⅵ、ⅰ、♭ⅲ、ⅴ}の♭ⅵ
が耳を経由して心に飛び込んでくる。これによって元のスケールは
ⅰ、ⅱ、♭ⅲ、ⅳ、ⅴ、♭ⅵ、♭ⅶ
の音たちとなり、これは同主調
ⅰ、ⅱ、 ⅲ、ⅳ、ⅴ、 ⅵ、 ⅶ
と同じ音階になる。つまり
- 長2度下の調
- 同主調
の2か所への小旅行♪ってな感じだね。
続き
いずれのケースも、終わりは
♭ⅥM7
つまり同主調の
ⅣM7
だね。さて続きのコードの
Ⅰ/Ⅴ
は、僕は(このブログのキミの音楽理論内では)トニックではなく
Ⅴのsuspended(音吊り上げ状態)
って考えるよ。つまり、Ⅰ/Ⅴは
- 実質的にはⅤ
- sus4のように、本体のⅤにやや解決したい状態。ただし吊り上げてるのは2つの音。3rd→4thと5th→6th
2点目を具体的にルビふってⅤと比較するとこうなる
Ⅴ ={1=ⅴ、3=ⅶ、5=ⅱ}
Ⅴsus4={1=ⅴ、4=ⅰ、5=ⅱ} 4番目が吊り上げ
Ⅰ/Ⅴ ={1=ⅴ、4=ⅰ、6=ⅲ} 6番目が吊り上げ
ルート以外が吊り上げられた状態。だからこのコードは
Ⅴsus(4,6)
って書いてもいいと思うんだ(僕の中では、ねw)5thの方は長2度吊り上げてるから解決したい強さはそんなにないけどね。
で次のコードはちゃんとこれの解決になっていて
Ⅴ
として小解決する。ここで元の進行を再掲しておくね。
② | ⅣM7(9) Ⅰ/Ⅲ | ♭Ⅲ6 ♭ⅥM7 Ⅰ/Ⅴ(※) Ⅴ
※意味合い的にはⅤのsuspend
さて、さっきまで2小節目の2つのコード経由で同主調に小旅行中だったのにいきなり元の調の話を始めちゃったね。ここもちゃんと接続があって、Ⅰ/ⅤをⅤsus(4,6)として書くと、
♭ⅥM7 → Ⅰ/Ⅴ
≒
♭ⅥM7 → Ⅴsus(4,6)
は同主調では
ⅣM7 → Ⅲsus(4,6)
をやってることになるんだ。いたってよくある短調ドミナントへのコード接続だね。うまいこと同主調の短調ドミナントⅢを元の調の長調ドミナントⅤの形で置き換えて小旅行から元の調へ帰ってきてるんだ。
コード進行/背景スケール:短調寄り道ハーモニックマイナー
③ | ⅣM7(9) Ⅰ/Ⅲ | Ⅴ ♯Ⅴdim Ⅵm Ⅴ
間奏と同じく
♯Ⅴdim
で ハーモニックマイナー の寄り道。
コード進行/背景スケール:
④ | Ⅱm7 Ⅲm7 | ♭ⅢM7add13
⑤ | Ⅴ
これはさっきと同じで、間の
♭Ⅵ
を省略したものだね。やはりダイアトニック外一発目は長2度下の調の世界に聞こえるかなぁ。
大サビ後間奏
① | Ⅳ Ⅴ Ⅵm | Ⅰ/Ⅲ Ⅱm/Ⅳ Ⅰ/Ⅴ Ⅴ
② | Ⅳ Ⅴ Ⅵm | Ⅰ/Ⅲ Ⅱm/Ⅳ Ⅰ/Ⅴ Ⅴ
③ | Ⅳ/Ⅵ Ⅴ Ⅳadd9 Ⅳadd(9,13) | ♭Ⅶ
符割:動き出す情景
これまで4分音符2拍単位(途中倍テンポで1拍)単位だった流れが、ここで初めて食う形、付点4分音符で一気にすべてが動き出す。MVも晴れに向かっていく。
コード進行:小節ごとのT,Dと
① | Ⅳ Ⅴ Ⅵm | Ⅰ/Ⅲ Ⅱm/Ⅳ Ⅰ/Ⅴ Ⅴ
② | Ⅳ Ⅴ Ⅵm | Ⅰ/Ⅲ Ⅱm/Ⅳ Ⅰ/Ⅴ Ⅴ
このコード進行の偶数小節は、さっきのⅠ/Ⅴが実質Ⅴのsuspended状態って話と同じで、実質
Ⅲm Ⅳ Ⅴ
と同等のコード進行。書き換えると
① | Ⅳ Ⅴ Ⅵm | Ⅲm Ⅳ Ⅴ
② | Ⅳ Ⅴ Ⅵm | Ⅲm Ⅳ Ⅴ
ディグリーの数字だけ見ると、|456|345|456|345|っていう456と345の団子状態を交互に奏でてる。
この団子でみるともう小節単位で機能を持ってる感じ。極端な話、奇数小節目がトニックで、偶数小節目がドミナント、書き換えるとこう
① | Ⅵm Ⅵm Ⅵm | Ⅴ Ⅴ Ⅴ
その小説単位の機能の中で、456と345の順次進行を付点四分音符で力強く奏でて勢いをつけてる。この間奏では大きく何かが動いてる、聴いてる人の景色を変えようとしてる。
コード:ミクソリディアンで広げる世界
③ | Ⅳ/Ⅵ Ⅴ Ⅳadd9 Ⅳadd(9,13) | ♭Ⅶ
ここでもまたダイアトニック外のコード
♭Ⅶ
が最後に登場する。コード表記だけ見ると、あぁ同主調ねって思いがちだけどここはキースケール ミクソリディアン 出身のコードになるよ。
背景スケール分析として、直前での ダイアトニック にこの最後のコードの♭ⅶが上書きして ミクソリディアン、って見方でもいいけど、単純にここはストリングスのフレーズを追えば7つの音がすべて出てくる。
ⅰ ~ ⅳ ⅴ ⅳ ~ ⅰ ~
ⅱ ~ ⅲ ⅳ ⅲ ~ ⅱ ~
♭ⅶ ~ ⅰ ⅱ ⅲ ~ ⅳ ~
ⅲ ⅱ ⅰ ⅱ
ⅲ ⅳ ⅴ~ⅳ ⅴ ⅵ ⅳ ⅴ ⅵ
♭ⅶ~~~~~
って動いて、ここまでで7つの音が
ⅰ、ⅱ、ⅲ、ⅳ、ⅴ、ⅵ、♭ⅶ
って確定してるよね。 ミクソリディアン ってどんなイメージかな?僕は視野の先が広大に開けたイメージ。アメリカの広大なイメージとかとか。
ここまでの展開でリズム的に、そして和音的にガンガン雰囲気を変えるようとしてるね。そしてその最後の ミクソリディアン で一気にガツンとひらける景色、雲の隙間から光が差し込むイメージだね。…ってまさにMVとシンクロしたよ。綺麗。

おしまい
さてどうだったかな?
まだまだ、『大サビの「答えてよ」直前の「綺麗かい」からボーカル音量上げて距離感縮めてる!!』とことか、細かく触れだすときりがないねwなのでここまで!冒頭にも書いたけど特に素敵だと思った要点はここらへんかな?
- 曇り(低いピッチ)から入るイントロ
- 終止ゆりかごのようなLovin’ You進行×センターメロディで情景感
- 音量、音数、テンション変化で情景が連続しつつも些細な変化
- ♭×2→♭×3→元の調と大きく羽ばたく展開の大サビ
- ミクソリディアン の大きく広がる景色とMVの差し込む光のシンクロ
それじゃーね!
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コメント
[…] 以前他の記事でLovin’ You進行と…した、Ⅳから下がっていく 順次進行 の変形だね。この穏やかな流れの最後(6小節目)に一度Ⅴを差し込むことで2-5-1を形成している。 […]