前回の記事では、旧来の短調の概念(定義)を昨今の楽曲分析に最適化する整理をする中で、ダブルトニック、トーナルセンター、センター遷移などなど新しい概念が出てきたね。
これからは、その概念の中で少しずつ周りの世界を見ていくよ。今回は一番近い世界(調)だよ。
それではいこー!
トーナルセンター
前回の記事でさらっと初出のトーナルセンター、簡単な例でちょっと感じてみよう。
以下動画ではCメジャーキー/Aマイナーキーでそれぞれのトーナルセンターを確認するよ。フレーズの一部で音を伸ばしたまま止めるので、どこの音に行きたいかをキミの心に問いかけて、次の音を聴いたときその音を心が欲してたかをキミの心に確認してね。
どうだったかな?トーナルセンターを聞いた時の「あ、これこれ!」感わかったかな?感覚が鋭い人なんかは
Cメジャーキーのファからのドは少し強引で、一度ミかソに行きたいな
とかとか感じたりもするかもね。でもそこでミかソが鳴ったと想像してみて。ファーミーとかファーソーとか。更にそこからドに行きたくない?終わりにはドが欲しくない?
もし次に何が聞きたいかってのを感じなくても、結果的にドとかラを聞いたときに納得感や落ち着きを感じたのなら、それのことだよ。
この感覚なんだ。「ファからドに行きたいか」という単音に働く重力よりも、「色々音を聴いて今はファを聴いてるけれど、最終的にはドで落ち着きたいな」っていう今いる場所や空間として落ち着く方向という重力の感覚。
調性音楽の世界とその中の重力を絵にしてみたらこんな感じかな

- 調性(※)を感じている音楽の空間の中に、色~んな音が浮遊していて、それらにはゴールテープ(トーナルセンター)に向かう重力が働いている。※明るい、暗い、不安、むずむず、次に進行したい、そのまま終わりたいなど
- そのゴールテープ(トーナルセンター)はⅰとⅵのどちらかが持っててたまに交換したりしてる、ⅰとⅵで交換しやすい状態。
- ゴールテープを持ってる方に音が移ったとき(トーナルセンターの音を鳴らしたとき)に到達感、ゴール感がある。
- ⅰやⅵの単音だけだと寂しいから、背景でその世界の音を重ねた和音を響かせる(通常ダイアトニックスケール上の3度、5度を重ねた音)。センターがⅰのときの和音はⅠ、ⅵのときの和音はⅥm。それがトニック・終止感を持つコード。
- 重力がⅰに働いている状態を長調、ⅵに働いている状態を短調と呼ぶ。
この図を具体的にCメジャーキーで描くとこうだよ。

それぞれに重力の強さの違いはあるし、すべての音の一番進みたい方向の音がⅰやⅵというわけでもないよ。「聞いて納得感がある音」としてドやラがあるということだよ。
ドが中心のときのシの音は、落ち着く音というよりもドに補正したい、次にドを聴きたいというような感じ。でもシが中心音の時(さっきの動画で全部半音1つ下げた状態)はそんなこともなくシが落ち着く音。
つまり音というのは中心音との関係性で音のキャラが決まるんだ。この中心音=トーナルセンターこそが調の本質といってもいいね。(調性は英語でトーナリティって言うんだ。中心音はトーナルセンター、文字通り調性の中心!)
平行調
さて、そんなトーナルセンターだけど、前回の短調の記事の時にセンター遷移の話をしたね。キーは長調と短調を二つ持っていて、センターを交換し合うという内容だった。
簡単に考えるためにCメジャーキー/Aマイナーキーで考えるよ。白鍵盤だけの世界でトーナルセンターがドにあるとき、Cメジャーキー(ハ長調)と呼び、トーナルセンターがラにあるときにAマイナーキー(イ短調)と呼ぶんだったね。
Cメジャーキーから見たAマイナーキーのこと(センターがAに移った場合のこと)をCメジャーキーの平行調と呼び、逆も同様でAマイナーキーから見たCメジャーキーのこと(センターがCに移った場合のこと)をAマイナーキーの平行調と呼ぶよ。
旧来の音楽理論では平行調は別のキーである解釈なので、上の図でいう枠(調=世界)が真っ二つに割れちゃってて、行き来するのには転調が必要になる。そして短調は短調でディグリーを振り直すんだ。
Cメジャーキーのド,レ,ミ,ファ,ソ,ラ,シはⅰ,ⅱ,ⅲ,ⅳ,ⅴ,ⅵ,ⅶと番号振るけど、Aマイナーキーはラシドレミファソの順にⅰから数字を振るので、同じ音であってもメジャーキーの数字とは別の数字になる。例えばラはCメジャーキーのⅵであってAマイナーキーのⅰなんだ。
更にマイナーキーではⅰからⅲ,ⅵ,ⅶまでの音の距離がメジャーキーのものと違うものになる(図のものさしイメージ参照)。短調のⅲ、ⅵ、ⅶには表記上♭をつけなきゃいけなくなる。ちょっと面倒だよね。
一方でダブルトニックの概念では、平行調は同じ空間(さっきの図の枠は折れてない、つながったまま)で、トーナルセンターが左右移り変わるって考えるだけなので、ディグリーの数字もそのまま考えるよ。Aマイナーキーもドレミファソラシの順にⅰから番号を振ってメジャーキーと同一視する。つまり、この平行調というものはほとんど意識しないでも大丈夫だよ!同じ世界の中だ。
音階
平行調の音階(ディグリー:数字)は先述のとおり。同じキーの扱いなので音階も同じだよ。
Cメジャーキーのド,レ,ミ,ファ,ソ,ラ,シ⇔ⅰ,ⅱ,ⅲ,ⅳ,ⅴ,ⅵ,ⅶと振った数字はAマイナーキーの中でもド,レ,ミ,ファ,ソ,ラ,シ⇔ⅰ,ⅱ,ⅲ,ⅳ,ⅴ,ⅵ,ⅶのまま!
スケールは基本的には、長調はメジャースケール、短調はマイナースケールと区別するよ。だけど数字がそのままなのでマイナースケールのディグリーはⅵ,ⅶ,ⅰ,ⅱ,ⅲ,ⅳ,ⅴの順に並べるんだ。
平行調同士のスケールの図を下に並べるよ。鍵盤の下段の物差しが半音の距離を測るスケールものさしだよ。
コード
同じキー、音階も同じ数字なので、コードのディグリーも同じだよ。CメジャーキーもAマイナーキーもC,Dm,Em,F,G,Bdim(=Bm♭5)の順にⅠ,Ⅱm,Ⅲm,Ⅳ,Ⅴ,Ⅵm,Ⅶdim(=Ⅶm♭5)だよ。
まとめ
今回は音楽的なことというよりも定義等のルール色が強かったね。トーナルセンターについては、是非いっぱい色んな曲を聴きながら「あ、この曲はこの音で終わりたいな、つまりセンタートーンはこいつだな」「終わりの音わざとセンター以外にしてるな、浮遊感出そうとしてるな」などなど心の声を訊いてみてね。
さて、整理するよ。
- トーナルセンターは調性・音楽の世界観の中心の音
- すべての音はトーナルセンターに向かう(トーナルセンターを聴くと落ち着く)
- すべての音はトーナルセンターとの位置関係でキャラクタが決まる
- メジャーキーからみたマイナーキーへのセンター遷移状態(トーナルセンターがⅰのときの状態から見る、トーナルセンターがⅵのときの状態)を平行調と呼ぶ。キーとしては同じものとして扱う(逆も同様)

図のように平行調は同じ調(図の枠内)の中の出来事だ。
補足~同じ世界~
タイトルに書いた“同じ世界”についてだけど、トーナルセンターがⅰにあるのかⅵにあるのかでゴールが違うから世界が違うのでは?って思ったキミもいるかもね。もちろんその考えも正しいよ!
同じという考え方はどこまで細かく分けるかで話が変わってくるので、用途にあった“同じ”で考えるのがいいね。例えばリンゴが2つあって「(果物として)同じだね」もあれば「(値段も産地も)同じじゃないね」もあるし「(そもそも個々の物体として)同じじゃないね」もある。どういった意味で同じなのかが重要。
今回は、(同じトニックを持つ(ダブルトニック)世界という意味で)同じ世界として平行調を紹介したよ。MSTDIOでは、これはもう調として同じもの(ただし内部に「センター転移」って考えを持たせて類別)って整理をしているよ。
次回以降は(同じセンターを持つという意味で)同じ世界である同主調、平行同主調を紹介していくよ!
こんなとこかな?それじゃーね!
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コメント
[…] 前回の記事ではトーナルセンターとダブルトニックそれぞれが主役となる同主調について学んだね。トーナルセンターというゴールテープをⅰとⅵが奪い合う“同じ世界”の中のお話だった。 […]
[…] この音は、一般的な音楽理論の表現を借りれば平行調の中心音、キミの音楽理論(本サイトの…で言えば、同じコード進行のまま トーナルセンター を短調側に寄せた状態。 ダブルトニック がやや短調側にバトンタッチ状態。 […]