実際のヒット曲で学ぶ音楽理論だよ!キミの音楽理論で整理した武器で楽曲を分析し、得られた知見をキミの音楽理論にフィードバックしてレベルアップいくんだ!
コード進行は「楽曲情報」ウィジェットで好きな調に移調できるから、分析やコピー演奏の際の参考に活用してみてね!
過去に耳コピ+分析した作品たちは カテゴリ検索 または 目次(手動更新のため不定期) から参照できるよ。それではいってみよー!
目次
楽曲情報
さて、今回の楽曲分析の題材は アーティスト THE ORAL CIGARETTESの 作品名 エイミー だよ!彼らの2ndシングル、元々特定の人に向けたラブソングだったのが、東日本大震災を受けて、『大切なものを失う怖さ。』とか『繋がれる大切さ。』を実感し書きなおして発信した作品とのこと。
想い出がくるくる回る表現、包み込むステレオアコギのストラミング、同じコード進行で景色を変えてくメロディ、サブドミナントマイナーの祈りのような優しさなどなど、楽曲を盛り立てる表現沢山なのでぜひ分析してみよー!
調は Aだよ。♯が3つ、ファとドとソにつく調だ。
コード進行
イントロ
① | Ⅰadd9 | 〃 | 〃 | 〃
② | Ⅲm7 | 〃 | 〃 | 〃
③ | Ⅵm7 | 〃 | 〃 | 〃
④ | Ⅳ | 〃 | Ⅴ | 〃
Aメロ
① | Ⅰadd9 | 〃 | 〃 | 〃
② | Ⅲm7 | 〃 | 〃 | 〃
③ | Ⅵm7 | 〃 | 〃 | 〃
④ | Ⅳ | 〃 | Ⅴ | 〃
⑤~⑧:①~④に同じ
Bメロ
① | ⅣM7 | Ⅳadd(9,13) | Ⅰadd9 | Ⅰadd(9,13)
② | Ⅱm7 | Ⅱm7(11) | Ⅰadd(9,11) | 〃
③ | ⅣM7 | 〃 | Ⅰadd9 | 〃
④ | Ⅱm7 | Ⅲm7 | Ⅳ | Ⅴ
サビ
① | Ⅰadd9 | 〃 | 〃 | 〃
② | Ⅲm7 | 〃 | 〃 | 〃
③ | Ⅵm7 | 〃 | 〃 | 〃
④ | Ⅳ | 〃 | Ⅴ | 〃
⑤ | Ⅰadd9 | 〃 | 〃 | 〃
⑥ | Ⅲm7 | 〃 | 〃 | Ⅲ7/♯Ⅴ
⑦ | Ⅵm7 | 〃 | 〃 | 〃
⑧ | Ⅳ | 〃
⑨ | Ⅴ | 〃 | 〃 | 〃
間奏
① | Ⅰadd9 | 〃 | 〃 | 〃
② | Ⅲm7 | 〃 | 〃 | 〃
③ | Ⅵm7 | 〃 | 〃 | 〃
④ | Ⅳ | 〃 | Ⅴ | 〃
⑤~⑧:①~④に同じ
大サビ
① | ⅣM7 | 〃 | Ⅲm7 | 〃
② | ⅣM7 | 〃 | Ⅰ | 〃
③ | Ⅱm7 | 〃 | Ⅲm7 | 〃
④ | Ⅳ | 〃 | Ⅴ | 〃
サビ2
① | Ⅰadd9 | 〃 | 〃 | 〃
② | Ⅲm7 | 〃 | 〃 | 〃
③ | Ⅵm7 | 〃 | 〃 | 〃
④ | Ⅳ | 〃 | Ⅴ | 〃
⑤ | Ⅰadd9 | 〃 | 〃 | 〃
⑥ | Ⅲm7 | 〃 | 〃 | Ⅲ7/♯Ⅴ
⑦ | Ⅵm7 | 〃 | 〃 | 〃
⑧ | Ⅳ | 〃 | Ⅴ | 〃
ラスサビ
① | Ⅰadd9 | 〃 | 〃 | 〃
② | Ⅲ7 | 〃 | 〃 | 〃
③ | Ⅵm7 | 〃 | Ⅴ | 〃
④ | Ⅳ | 〃 | Ⅳm7/♭Ⅵ | Ⅳm/♭Ⅵ
アウトロ
① | Ⅰadd9 | 〃 | 〃 | 〃
② | Ⅲ7 | 〃 | 〃 | 〃
③ | Ⅵm7 | 〃 | Ⅴ | 〃
④ | Ⅳ | 〃 | ⅣmM7/♭Ⅵ | 〃
⑤ | Ⅰadd9 | 〃 | 〃 | 〃
⑥ | 〃 | 〃 | 〃 | 〃
楽曲分析詳細
全般
コード進行:大ぶりな1-3-6と駆け出す4-5
① | Ⅰadd9 | 〃 | 〃 | 〃
② | Ⅲm7 | 〃 | 〃 | 〃
③ | Ⅵm7 | 〃 | 〃 | 〃
④ | Ⅳ | 〃 | Ⅴ | 〃
イントロ、Aメロ、サビのこの構成、
- Ⅰのトニックで主題掲げて
- Ⅲm7の弱いドミナントで少し行き場を探して
- Ⅵm7の弱いトニックで着地点からの景色を見て
と、ここまでを大振りの4小節で情景を描いてるね。そしてそこから小節数半分となるⅣ、Ⅴで次へ向けての駆け出し。④で明確に前に進もうとしてる、そんな展開。
そんな同じ構成をイントロやAメロ、サビで奏でられる中、メロディでここの景色をうまく変えているんだ。
構成:同じ進行の中メロディが変える光景
イントロは音数(楽器の数)多めで音量大きめの感情盛り上げる空気、そんな中メロディが トニック 3度の
ⅲ
を強調するリフ。まっすぐ見据えるというよりも、どこか遠い目をするような浮遊感。
続くAメロは音数少なめの感情落ち着けるトーン、メロディが トニック 1度の
ⅰ
に重力をかける感じで、穏やかな雰囲気の中、自身の心の中心に視点を置く感じ。タイミングをずらすスネアドラムなんかも、進もうとする楽曲の前向き感にストップをかけてる。後半でようやく進み始める。
そこから動き出すBメロを挟み、また同じ展開(コード進行)のサビが来る。サビでのメロディ中心は6度の
ⅵ
この音は、一般的な音楽理論の表現を借りれば平行調の中心音、キミの音楽理論(本サイトの理論カテゴリ)の言葉で言えば、同じコード進行のまま トーナルセンター を短調側に寄せた状態。 ダブルトニック がやや短調側にバトンタッチ状態。
同じコード進行でもここまで情景変えて展開できるんだねっていう美しい形、いい例だね。
コード:少しずらして輝くトニックⅠadd9
全般的に、トニックである
Ⅰ は Ⅰadd9
で奏でられる。メジャーコードのadd9は トライアド の真正面感を少しずらしたような、コード の主張を薄めつつ輝く響きを与えてくれる。 トニック がきらめいてる感じ。
イントロ
リズム・コード・メロディ:爽やかさ・透明感・浮遊感のギミック
リズム的観点で、冒頭から4つ打ちキックに16分ハイハットで爽やかな雰囲気を演出している。そこにコード的観点で先述のトニックへのadd9テンションの透明感、そしてこれも先述のメロディーがキーの長3度を中心とする浮遊感。
リズム、コード、メロディ3観点での爽快な透明浮遊感。綺麗だね。
Aメロ
リズム:ずらしたスネア
始まりのリズムが不規則スネアで、イントロでの温度を少し下げるような緩急を生んでるね。そしてすぐ裏拍に戻って温度上げていく。
Bメロ
リズム(キメ):前半に体重かけて揺さぶる小節
今度はAメロとは異なり、ドラムがリズムを運んでいく中で楽器隊が緩急を作る流れ。前半重くて後半軽くするような揺さぶりは緩急強くて引き込まれるね。
こういう重さ対比は結構効果的に使われてて、長さは違えどみんな知ってるんじゃないかなってくらい代表的な例だとQueenのWe will Rock youとかもだね。まるで平泳ぎの水中⇒息継ぎのような揺さぶり。サビへの期待値が高まる。
サビ
サウンド:包み込むアコギのストラミング
左右からステレオで聞こえるアコギ、小節の頭だけマイクポジション変えて録ってるんじゃないかってくらい強調するストラミング(ジャっではなくチャラララーンってばらして鳴らす弦)で聴き手を完全に視点真正面に引き込むね。
コード:短調ドミナント×3rd強調
① | Ⅰadd9 | 〃 | 〃 | 〃
② | Ⅲm7 | 〃 | 〃 | 〃
③ | Ⅵm7 | 〃 | 〃 | 〃
④ | Ⅳ | 〃 | Ⅴ | 〃
⑤ | Ⅰadd9 | 〃 | 〃 | 〃
⑥ | Ⅲm7 | 〃 | 〃 | Ⅲ7/♯Ⅴ
⑦ | Ⅵm7 | 〃 | 〃 | 〃
⑧ | Ⅳ | 〃
⑨ | Ⅴ | 〃 | 〃 | 〃
サビ後半の⑥は終わりの小節が少し違う。これは短調トニック
Ⅵm
へのドミナント。
Ⅲm7 を Ⅲ7
に強化することで、進行力が増してる状態。更にこれにより変化する音の
♯ⅴ
をベース音にすることで更に飛びたいエネルギーを強調してる。
間奏
リフ:想い出が心の中まわる?繰り返しリフ
間奏はコード進行的にはイントロたちと同じ構成。前半は4つ打ちで、後半からハーフ(テンポが半分)になって緩急をつけている。
その後半のギターソロも泣かせに行くようなものではなく、ただトライアド内の音をつなぐ形で8分音符3個単位でくるくるさせてるだけのもの。
でもこれがすごくよくって、ゆったりとしてリズムに浸る心の中をまるで想い出がぐるぐると回ってるかのように感じる。キミはどう聞こえる?
大サビ~サビ(2回目)
リズム(キメ):アクセントの効くベースと落ちサビ
大サビはBメロに続き揺さぶる構成だね。今度は跳ねるベースが時間を運んでいく。そこからの落ちサビ。クランチなギターサウンドが温度を下げて続くサビへの期待感を高める。
ラスサビ
コード:サブドミナントマイナーの優しい陰り
① | Ⅰadd9 | 〃 | 〃 | 〃
② | Ⅲ7 | 〃 | 〃 | 〃
③ | Ⅵm7 | 〃 | Ⅴ | 〃
④ | Ⅳ | 〃 | Ⅳm/♭Ⅵ | Ⅳm/♭Ⅵ
同じコード進行に別メロディ、と思わせて③で順次進行でⅤ経由でⅣに降りてくる。そこからの④のダイアトニック外コードの
Ⅳm/♭Ⅵ
はサブドミナントマイナーだね。一般的には同主調の借用(※後述)。同主調のディグリーで書きなおすと
Ⅱm/Ⅳ
で、ルビのコード名同じでしょ?このサブドミナントマイナーは、優しく陰った響きがする。更にここではベース音で特性音(※)である
♭ⅵ ※心がⅵを期待してる中、それを外してる音
を踏んでるから優しく陰る匂いを強くしているね。
アウトロ
背景スケール:同主調でなくハーモニックメジャーのサブドミナントマイナー
① | Ⅰadd9 | 〃 | 〃 | 〃
② | Ⅲ7 | 〃 | 〃 | 〃
③ | Ⅵm7 | 〃 | Ⅴ | 〃
④ | Ⅳ | 〃 | ⅣmM7/♭Ⅵ | 〃
さっきのラスサビと同じように、ここも④の後半にサブドミナントマイナーが出てくる。さっきとの違いは何かっていうと、7thの音が違う。
ここでの7thの音は、キースケールのディグリーで具体的に書くと
ⅲ
の音。つまり元のスケールから逸脱していない音で、実際にリードギターのメロディがこの音をフレーズ内で弾いている。なので、この瞬間の背景スケールは
ⅰ、ⅱ、ⅲ、ⅳ、ⅴ、♭ⅵ、ⅶ
となって、これはハーモニックメジャースケール、原曲のAメジャーキーでは下図のスケールになるよ。
さて、さっきラスサビのサブドミナントマイナーは同主調の借用って言ったけど、実ははっきりしていないんだ。というのは7thの音が
ⅲなのか♭ⅲなのか
が明確に聞こえてこない。実際にはアコギで触れてると思うんだけども、実際に演奏に混ぜて聞いてみたら
♭ⅲ
の方がしっくりくるから
Ⅳm7={ⅳ、♭ⅵ、ⅰ、♭ⅲ}
なんだろうな、って思う。(耳の精度が残念でごめんw)
ところでラスサビのサブドミナントマイナーとアウトロのサブドミナントマイナーの違い、つまり
Ⅳm7 と ⅣmM7
の違いはなんだろう?僕の言葉で聴感を書くと、前者は
- 直前聞いていた世界からの離脱感が大きい
- 少し前向き感がある
- その分陰り感が弱め
という感情になる。やはりそういう意味で同主調感(別の調感)が強い。一方で後者は
- 直前聴いていた世界からの離脱感は少ない
- 明るさはなく、不安定な感情がある
- 世界は同じままで陰り感が強い
ような効果がある。これは、直前までに聴いていた世界観(背景スケール)から逸脱する音が少ない(6番目の音1つだけ)であることや、コード構成音がaug(増三和音)を含むことが効いてるね。音楽的な和声的/旋律的距離の記事でも書いたようにaugコードはトライアドの中でもっとも離れた位置関係の和音で不安定さを煽る。
本作品のコードを書いてるサイトとかでは、このサブドミナントマイナーをアウトロに関しても
♭Ⅵ6
で書いてるところもあったけど、ここは1つギターリフの顔を立てて
ⅣmM7
というハーモニックメジャー上のコードをお勧めするよ!
おわり
とまぁ、和音的な話以外にもリズムやサウンドにもちょっと触れてみたよ。どうだったかな?
このバンドは個人的に凄く面白いバンドだって思ってる。今回の作品はダイアトニック主体の落ち着いた作品だったけど、ほかの作品たちは曲調がすごくスパイシーでキワをがっつり攻めてくイメージ!
需要がありそうであればまたこのバンドの作品にトライしたいな。
それじゃーね!
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