実際のヒット曲で学ぶ音楽理論だよ!キミの音楽理論で整理した武器で楽曲を分析し、得られた知見をキミの音楽理論にフィードバックしてレベルアップいくんだ!
コード進行は「楽曲情報」ウィジェットで好きな調に移調できるから、分析やコピー演奏の際の参考に活用してみてね!
過去に耳コピ+分析した作品たちは カテゴリ検索 または 目次(手動更新のため不定期) から参照できるよ。それではいってみよー!
楽曲情報
今回は米津玄師が作詞/作編曲したパプリカだよ。NHKの2020年東京五輪応援曲だね。
冒頭子供たちと男の大人の人(米津玄師氏?)との会話、じゃんけんぽん等の他愛無い音声から始まるこの作品、そういうお遊びなギミックは他にも色々あって、民族的な楽器(五輪テーマだからかな?)とか「雨に燻り」から入る雨イメージな音色とかラスサビの米津氏(だと思う)の合流ユニゾンとか子供の「頑張ってー!」とかとか。これ五輪中継とかで「頑張ってー!」のとこで流れるとアツいね!
この曲の調は、Aメジャーキー始まりだよ!サビでは短3度下のF♯メジャーキーに転調しているんだ。それでは概要と詳細いくよー!
公式Youtube動画は埋め込みができないのでリンクを左に貼るね。
本作品の他パート分析はこちら!
概要・ポイント
Bメロ
① | Ⅵm Ⅲm | Ⅳ Ⅴ Ⅰ
② | Ⅳ Ⅴ Ⅳ | Ⅲ7 Ⅲ7/♯Ⅴ Ⅵm
③ | Ⅵm Ⅲm | Ⅳ Ⅴ Ⅰ
④ | Ⅳ Ⅲ7 Ⅲ7/♯Ⅴ | ⅥM
- トライアドなぞる3度メロの懐メロ感・真正面感
- Ⅲ7の短調感、暗く哀しく引き締め感
- Ⅲ7中の♯ⅤベースのⅥm誘導
- Ⅲ7上のメロディックマイナによる暗い中少し前を向く哀愁感
- ⅥM=ピカルディ3度の開放的明るさ
- 開放的明るさを中心とする短3度下転調
- メロディックマイナからのピカルディ3度により迷いのない丁寧な転調
- (調性観点以外)エスニックな楽器?バンジョー!?五輪・世界をイメージ?(それとも和楽器なのかな?)
- (調性観点以外)殴るくらいのストリングス(スピッカート?)の力強さが五輪の応援を連想
Bメロはてんこもり!最後に動画もつけるので、補足として聴きながら確認してみてね!
それではいこー!
ディグリー分析+スケール分析
Bメロ
まずはメロディ考察から。
メロディ:トライアドメロの童謡感
ここのパートはほぼほぼその瞬間のコード(3和音)の音を移動するようなメロディなんだ。
右の図を見てみて、コードがC♯mのところのメロディが「ソ♯~ド♯ミ」というようにコードをなぞる形のこと。
具体的に見てみるよ:
な
つ / Ⅰ (ⅰ, ⅲ, ⅴ)
がー くー / Ⅵm (ⅵ, ⅰ, ⅲ)
るー か ぜ / ⅲm (ⅲ, ⅴ, ⅶ)
がー / Ⅳ (ⅳ, ⅵ, ⅰ)
たー / Ⅴ7 (ⅴ, ⅶ, ⅱ, ⅳ)
つー / Ⅰ (ⅰ, ⅲ, ⅴ)
「たー」のところは
Ⅴの7th=ⅳの音
って見方でもいいけど、ここのコード進行/コード状態は
Ⅳ→Ⅰ と進行する間に経過的に Ⅴ を挟んだ
状態なので、1拍差で
Ⅳ (ⅳ, ⅵ, ⅰ) の ⅳ
ってみてもいいね。
トライアド内(コードルート、3rd、5th※)のメロディは童謡的、基本のような真面目感があるんだ。少し良くない言い方するとダサくなったりもする。真面目君すぎて面白みがかけるような感じというか。※ドミナントのときは7thも。
一方で、7th~テンション上(7th、9th、11th、13th)とコードルートから離れていくとオシャレ感、近代感を帯びてくる。ド真正面から少しズラしたような、スカしたオシャレ感。
今回の作品のBメロ、上に書いたディグリーで確認したとおり、もうほぼほぼトライアド内をなぞってて童謡感が満載になってるんだ。Aメロ篇で書いたペンタトニック(ヨナ抜き)の童謡感とは別の角度から童謡感を出してきたね。
動画は0分49秒から1分14秒だよ!
コード進行:短調でのⅣ→Ⅴ→Ⅰ
続いてコード的なところを見ていくよ。
① | Ⅵm Ⅲm | Ⅳ Ⅴ Ⅰ
Ⅵm始まり、Aメロと打って変わってマイナーな雰囲気を出したね。一度
Ⅳ → Ⅴ → Ⅰ
でさっきまでの明るい主題に持っていくけどこのあともマイナー中心に哀愁染みるよ。
コード進行:短調ドミナント
② | Ⅳ Ⅴ Ⅳ | Ⅲ7 Ⅲ7/♯Ⅴ Ⅵm
やはりBメロの中心はマイナーだね。Aメロの明るい主役から雰囲気を変えてⅥmが主役さん。そしてそのⅥmに向かう前にⅢmをⅢ7(メジャーセブンス)にしてより一層主役Ⅵmへ向かってジャンプしたくしてる。短調のドミナント。
このⅢ周辺に関してはこのようなエネルギーの強さがあるよ!
Ⅲ:メジャーコード化
短調のドミナント(トライアド)、Ⅵm行きたい度UP!
Ⅲ7:セブンス化(M3⇔m7がトライトーン)
上記のセブンス化でトライトーンが生じ、動きたい度もっとUP!
Ⅲ7/♯Ⅴ :3rdベースのオンコード
ベースが動きたい先のⅥmの半音下まで迫ってる。もうⅥmいっちゃえ!な状態
最後のⅢ7/♯Ⅴは、Ⅲの3rd(=♯ⅴ)を強調するという効果もあるけど、次のコードの隣の音に迫ってスムースに動きやすくする効果もあるね。
例えばドからミに行くようなメロディーがあったときに、ミの直前でレを経由するような動き方。ドーミーをドーレミーみたいな。
このBメロの他の所だと例えば
② | Ⅳ Ⅴ Ⅳ | Ⅲ7 Ⅲ7/♯Ⅴ Ⅵm
の②冒頭の3つめⅣもそうだね。Ⅳ→Ⅴから次の小節のⅢ7に動く直前に1拍だけⅣを経過してから行く感じ!
動画は1分14秒~1分50秒だよ!ⅢmとⅢ7/♯Ⅴを比較してるので、Ⅲ7/♯Ⅴのエモさを感じるのだ!。
③ | Ⅵm Ⅲm | Ⅳ Ⅴ Ⅰ
これは先ほどの①と同じ、割愛。
スケール変化:メロディックマイナー
④ | Ⅳ Ⅲ7 Ⅲ7/♯Ⅴ | ⅥM
ここはさっきの②と同じで
Ⅵmに迫るⅢ7
もっともっと迫るⅢ7/♯Ⅴ
が使われているね。
ダイアトニック外のⅢ7、このコードによってダイアトニックスケールから飛び出しちゃう音は1個だけあって
ⅲ, ♯ⅴ, ⅶ の ♯ⅴ
なんだけど、その1つ下の音=スケール4番目の音を
ⅳ と ♯ⅳ
のどちらにするかで曲の雰囲気が別物になるんだ。
前者はハーモニックマイナースケールというスケールになってキツく切ない演歌のような感じ。心縛りつけるような感じかな。
後者はメロディックマイナースケールというスケールになって暗い中にも微妙な明るさや前向き感がある雰囲気。黒猫のタンゴやだんご3兄弟のような哀愁感や懐メロ感のある感じかな。
パプリカBメロの④のところでは後者のメロディックマイナースケールになっているんだ。そしてこの特性音2つ(♯ⅳと♯ⅴ)を楽器ではなく、ボーカルのメロディが直接触れちゃってるから抜群に哀愁を出しちゃってるんだ。それも
(あなたに)会いたい
という歌詞を載せてるところだからなおさらぐっと来るね。
この辺のマイナースケールの比較は動画で試してるから聴き比べてみてね。1分50秒~2分38秒だよ!
コード進行:ピカルディの3度
そして、Bメロのトニック(主役)であるⅥmをⅥ(メジャーコード)に変化させている。これはピカルディの3度と呼ばれている技法で、本来暗いはずのトニックⅥmをメジャーコードにすることで平行同主調のⅠのような明るさと終止感を持った状態にできるんだ。
どう?バカ明るいでしょ?僕の中では「優勝!!!」って胴上げするくらいのイメージ!
動画は2分38秒~2分49秒だよ!
初心者向けではないんだけど、実はここにはもっと巧みなからくりがある。Ⅵmをメジャーコードにしてピカルディの3度!ってのは結構お手軽に優勝感を得る手法なんだけど、単純にそれをやっただけの場合、下属短調のドミナントと誤認する可能性も少なくないんだ。つまり、
Ⅵを聴いたときに
Ⅰではなく
Ⅲと勘違い
しやすいんだ。(上のボックスでは、ボックス左上に書いてる調が異なるけどルビ振ってるコードが同じになってるってことを確認してね)
心情効果的には「明るい終止」ではなく「Ⅱmに行きたい」って思っちゃう状態。具体的にコードで見ると
下属調のⅢ → Ⅵmは
元の調のⅥ → Ⅱmだからね。
なぜそんなことになるのか、っていう理屈はこう。
まず人の耳(心・感情)は今まで聞いていたスケールに浸っている。そこに突如現れるスケール外の音、これが既存の音を1つ消し去り上書きする。具体的には
ⅰ, ⅱ, ⅲ, ⅳ, ⅴ, ⅵ, ⅶのスケールが、
Ⅵ(ⅵ, ♯ⅰ, ⅲ)を聞いたことによりⅰが♯して
♯ⅰ, ⅱ, ⅲ, ⅳ, ⅴ, ⅵ, ⅶのスケールへ上書き
されるということ。この状態をよく見てみると
♯ⅰ, ⅱ, ⅲ, ⅳ, ⅴ, ⅵ, ⅶは
ⅱへと向かうメロディックマイナースケール
つまり以下と同じ音階になるため下属短調感が強くなる
ⅰ, ⅱ, ⅲ, ♯ⅳ, ♯ⅴ, ⅵ, ⅶ
これをコード視点から言うね。もしピカルディの3度がセブンスコードになったとするとどんな形になるだろうって考えると見えてくるよ。このスケール上だとⅥコードの7番目は♯のつかないⅴだから、
ⅥM7 (ⅵ, ♯ⅰ, ⅲ, ♯ⅴ) ではなく、
Ⅵ7 (ⅵ, ♯ⅰ, ⅲ, ⅴ)になる
このコードはドミナントの形でトニックと見なすのは厳しい(5度下に飛びたい状態)、つまり平行同主調のトニック(ピカルディの3度)の響きにはなりにくい(=心がそう感じにくい)。
平行同主調に聞こえさせるには、平行同主調だよって心の中のスケールを上書きしてあげればいいよね。段階的にでも耳に届ける音階を上書きしていって以下のスケール(平行同主調)にすれば完全に心を納得させられる。
♯ⅰ, ⅱ, ⅲ, ♯ⅳ, ♯ⅴ, ⅵ, ⅶ
ところで、ピカルディの3度が来る前に何かあったよね?ちょっと前にかいたメロディックマイナーだ!この音階は
ⅰ, ⅱ, ⅲ, ♯ⅳ, ♯ⅴ, ⅵ, ⅶ
だ。ほら、よく見てみて。ⅰ以外はもう同主調の音階になっちゃってるよね?そこへ現れたピカルディの3度!このⅥの登場でⅰは♯ⅰへと上書きされて完全に心の中に平行同主調が仕上がった状態となる。(図参照)
ピカルディの3度の直前のメロディックマイナーが完璧な平行同主調転調を実現させているんだ。
コード進行:接線転調
続いて転調。転調についての分類は別途記事にするけど、この転調は最大限丁寧な接線転調だよ。おもてなし感が続々だね。
ここまでに見た短調のドミナント化やピカルディの3度も踏まえてコード進行を見てみるよ。
- ①通常のダイアトニック版のコード進行
- ②短調ドミナント化版のコード進行
- ③ピカルディの3度版のコード進行
を時間軸縦に並べると
↓明日も ↓①Ⅳ ↓②Ⅳ ↓③Ⅳ
↓晴れるか ↓①Ⅲm ↓②Ⅲ7 ↓③Ⅲ7
↓なー? ↓①Ⅵm ↓②Ⅵm ↓③Ⅵ
となっていて、①の進行の
①のⅢm → Ⅵm
は短調の弱いドミナントモーション、これを②で強いドミナントモーションに強化&③で終わりを明るくしてたんだよね。この③の
Ⅲ7 → Ⅵ
はそのまま平行同主調の
Ⅴ7 → Ⅰ
と読み替えれるんだ。ルビの実コードを比べてみてね。一緒でしょ?コード進行ごと他の調のコード進行に読み替えての転調だから、スムースに世界が切替わるんだ。寄り添って転調先に飛び立つ感じだね。
動画は2分54秒~ラストまでだよ!
その他トピック
他には、動画内にも書くけどストリングスのスピッカートがものすごく強拍で、まるで声援のように力強いんだ。オリンピックを意識したのかな?(と勝手に考えてるけど真意は不明w)
そしてこの声援、始めはPAN左方向から聞こえてるんだけど、転調するときのピカルディの3度フレーズの時には真正面から大声援になる、すごく映像的で焚きつけられるね!
もう一個!BメロからPAN右前方にエスニックな楽器が出現するんだ。ワールドワイドなテーマだからかな?
ちょっとイヤホンやヘッドフォンで聴いてみて!まさか…PAN右前方ってことはこれ…地図上の日本を…!?
…は考えすぎかな??w
※ちなみに動画で僕が使用した楽器はバンジョーを使ったよ、日本関係ないw
…っと一旦ここまで!まとめ
さて、Bメロはめ~~~~~っちゃ長かったね。アツくなりすぎてごめん。簡単に箇条書きで振り返るとこーかな!?
- トライアドなぞる3度メロの懐メロ感・真正面感
- Ⅲ7の短調感、暗く哀しく引き締め感
- Ⅲ7中の♯ⅤベースのⅥm誘導
- Ⅲ7上のメロディックマイナによる暗い中少し前を向く哀愁感
- ⅥM=ピカルディ3度の開放的明るさ
- 開放的明るさを中心とする短3度下転調
- メロディックマイナからのピカルディ3度により迷いのない丁寧な転調
- (調性観点以外)エスニックな楽器?バンジョー!?五輪・世界をイメージ?(それとも和楽器なのかな?)
- (調性観点以外)殴るくらいのストリングス(スピッカート?)の力強さが五輪の応援を連想
動画も再掲しておくね!
次回はサビを予定!サビはこんなに長くないよ(Bメロがいっぱいありすぎたw)
それじゃーね!
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コメント
[…] まずコード的なポイント!Bメロでもあった「次のコード1つ隣のコードを経過する」という波風立て…がここでもみられるね。具体的には①後半から②頭にかけて […]
[…] ってね。単純なコードトーンのアルペジオだと真正面感・真面目感が強く幼稚になりかねないから、これは少しスカすのにいい感じ!これは米津玄師のパプリカBメロ篇のメロディ:トライアドメロの童謡感でも話したね。そしてこのスカしはアルペジオじゃなくテンションとしてイントロ篇のコード:テンションおしゃれ感でもあったね。 […]
[…] パプリカの時は、メロディックマイナーと、その後にピカルディの3度がⅰを♯させるという合わせ技で転調してたね。図を再掲すると […]
[…] 一番簡単なのはコード単体というよりもやっぱりさっきのHmの例の中で、メロディで触れてあげるケースとかじゃないかしら。例えばin Amで・E7(ミファ♯ソ♯) in AMm・Am(ラッ!) in AMm/Nmみたいな昭和風なタンゴのキメとかによくありそうなイメージね。最近だとパプリカなんかもMmで、そのまま主明度をあげてNMを完成させて転調するね。 […]