前回の記事ではトーナルセンターとダブルトニックそれぞれが主役となる同主調について学んだね。トーナルセンターというゴールテープをⅰとⅵが奪い合う“同じ世界”の中のお話だった。
これからしばらくは近しい調の話が続くんだけど、今回はまた別の次元での“同じ世界”のお話。
それではいこー!
目次
同主調(同主短調)
〇〇メジャーキーから見た〇〇マイナーキーのことを同主調って言うよ。例えば、Cメジャーキー(Aマイナーキー)から見たCマイナーキー(E♭メジャーキー)のことだよ。
ダブルトニックという概念の話の中では、ⅠとⅥm両方が主役だったね。ⅰとⅵとでトーナルセンターを交換し合っている状態だ。
そしてその差はⅠで終われば明るい、Ⅵmで終われば暗いっていう感じ。
さて、じゃー明るいⅠをマイナーコードのⅠmに取り替えたらどんな世界になるんだろう?トーナルセンターはⅰなので中心感、終止感はそのままなんだけど、雰囲気は…きっと暗いね。
このようにⅰの和音Ⅰをマイナーコードのトニックとして考えた調が同主調なんだ。言い換えるとⅰの場所を短調のⅵと読み変えた調のことだよ。
明るいゴールと思ってた場所が暗いゴールになってる世界…ゴールという役割は変わらないから、近しい世界だよねきっと。
音階
音階はⅰの場所からマイナースケールで測ったものと同じものになるよ。
右の図はマイナースケールの距離間隔を示す物差しでA(ラ)の音から測ったAマイナースケールの図なんだけど、これを具体的にAメジャーキーと対比してみよう。
まず、Aメジャーキーはラ、シ、ド♯、レ、ミ、ファ♯、ソ♯、鍵盤上♯となるのはドとファとソ、つまりラから数えて3番目と6番目と7番目だよ。
Aマイナースケールはさっきの図の鍵盤に見るようにラ、シ、ド、レ、ミ、ファ、ソで3、6、7番目が♭する形なので、音のディグリーで書くと
ⅰ, ⅱ, ♭ⅲ, ⅳ, ⅴ, ♭ⅵ, ♭ⅶ
という音階になるよ。具体例で見てみると
[Aメジャーキーの同主調Aマイナーキー]
ラ、シ、ド♯、レ、ミ、ファ♯、ソ♯
↓3,6,7番目を♭化=同主調↓
ラ、シ、ド 、レ、ミ、ファ 、ソ
[Cメジャーキーの同主調Cマイナーキー]
ド、レ、ミ 、ファ、ソ、ラ 、シ
↓3,6,7番目を♭化=同主調↓
ド、レ、ミ♭、ファ、ソ、ラ♭、シ♭
だよ。
コード
コードも元の調から見てみよう。同主調は元の調のⅠをⅥmとする調だから、Ⅵmから並べたダイアトニックコード
Ⅵm,Ⅶdim,Ⅰ,Ⅱm,Ⅲm,Ⅳ,Ⅴ
を元の調から見る(ⅥをⅠに番号振り直す)と
Ⅰm, Ⅱdim, ♭Ⅲ, Ⅳm, Ⅴm, ♭Ⅵ, ♭Ⅶ
になるよ。スケールと同じで、3番目、6番目、7番目が♭付きだね。具体的に見てみるとCメジャーキーの同主調Cマイナーキーは
Cm、Ddim、E♭、Fm、Gm、A♭、B♭
だよ。
平行同主調(同主長調)
これは、さっきの同主調の逆。△△マイナーキーから見た△△メジャーキーを平行同主調(同主長調)と呼ぶよ。つまり、Ⅵmという暗いトニックをメジャーコードのⅥにしてあげて、それをⅠとして持つ調のこと。
例えば、Aマイナーキー(Cメジャーキー)から見たAメジャーキー(F♯マイナーキー)のことだよ。
例
以下のように使い分けていくよ。
- Cメジャーキーの同主調(同主短調)はCマイナーキー/E♭メジャーキー
- Aマイナーキーの同主調(同主短調)はCマイナーキー/E♭メジャーキー
- Cメジャーキーの平行同主調(同主長調)はAメジャーキー/F♯マイナーキー
- Aマイナーキーの平行同主調(同主長調)はAメジャーキー/F♯マイナーキー
音階
音階はⅵのところからメジャースケールを並べた音階になるよ。
Cマイナーキーの平行同主調はCメジャーキーだね。これを例に具体的に見てみよう。
右の図はメジャースケールの距離間隔を示す物差しでC(ド)からスケールを測った図だよ。Cマイナーキーのスケールは3、6、7番目のミとラとシに♭がつく音階=ド、レ、ミ♭、ファ、ソ、ラ♭、シ♭だ。
一方でCメジャースケールは図のように、ミとラとシは♭しないナチュラルな音。つまり3、6、7番目の元の音が♯する形なので、平行同主調は元のマイナースケールの
ⅵ,ⅶ, ⅰ,ⅱ,ⅲ, ⅳ, ⅴ
が
ⅵ,ⅶ,♯ⅰ,ⅱ,ⅲ,♯ⅳ,♯ⅴ
へ変化した形になるよ。これはさっきの同主調の時の話の逆の対応で、具体例で見てみると
[Aマイナーキーの同主調Aメジャーキー]
ラ、シ、ド 、レ、ミ、ファ 、ソ
↓3,6,7番目を♯化=平行同主調↓
ラ、シ、ド♯、レ、ミ、ファ♯、ソ♯
[Cマイナーキーの同主調Cメジャーキー]
ド、レ、ミ♭、ファ、ソ、ラ♭、シ♭
↓3,6,7番目を♯化=平行同主調↓
ド、レ、ミ 、ファ、ソ、ラ 、シ
っていう感じだね。
コード
ⅥmがⅥというコードで調の1番目にくる形、数えなおすと面倒なので結論を書いちゃうね!元の調から見ると平行同主調のディグリーネームは
Ⅵ、Ⅶm、♯Ⅰm、Ⅱ、Ⅲ、♯Ⅳm、♯Ⅴdim
になるよ。Ⅰが♯??って思うかもしれないけど、さっきの音階で見た通り
ⅵ,ⅶ,♯ⅰ,ⅱ,ⅲ,♯ⅳ,♯ⅴ
とスケール3,6,7番目のⅰ、ⅳ、ⅴに♯が付くからね。具体例で見てみるとAマイナーキーの平行同主調Aメジャーキーは
A、Bm、C♯m、D、E、F♯m、G♯dim
だよ。
世界の近さ~同じ世界・近い世界~
前回紹介した平行調も含めて調の関係性を一度整理するよ。
平行調
- ◎音階は同じ (順不同)
Cメジャーキー=ド、レ、ミ、ファ、ソ、ラ、シ
Aマイナーキー=ラ、シ、ド、レ、ミ、ファ、ソ - 〇主役は同じ
Cメジャーキー=ドとラ(次点) ※ラはすぐセンター遷移して主役になる
Aマイナーキー=ラとド(次点) ※ドはすぐセンター遷移して主役になる
つまり、「◎音階(世界を構成する音たち)が同じ」「〇主役が(ほぼ)同じ」という次元の同じ世界。
同主調
- △音階は異なる (7つ中4個同じ)
Cメジャー(Aマイナー)キー =ド、レ、ミ、ファ、ソ、ラ、シ
Cマイナー(E♭メジャー)キー=ド、レ、ミ♭、ファ、ソ、ラ♭、シ♭ - ◎主役は同じ
Cメジャーキー=ド
Cマイナーキー=ド
つまり、「◎主役は同じ」「△音階(世界を構成する音たち)は3,6,7番目がちょっと違うキャラだけどだいたい同じ」という世界。主役という視点では同じ世界だし、音階・構成音という視点では似てる世界、近い世界だね。
平行同主調
- △音階は異なる (7つ中4個同じ)
Aマイナー(Cメジャー)キー =ラ、シ、ド、レ、ミ、ファ、ソ
Aメジャー(F♯マイナー)キー=ラ、シ、ド♯、レ、ミ、ファ♯、ソ♯ - ◎主役は同じ
Aマイナーキー=ラ
Aメジャーキー=ラ
「◎主役は同じ」で「△音階はだいたい同じ」という同主調と同じ結論だよ!下の図のように、結局平行同主調と同主調は見る視点が真逆ってだけの関係だからね。
具体例でいうと、Aメジャーキーの同主調はAマイナーキーだし、Aマイナーキーの平行同主調はAメジャーキーってこと。
まとめ
今回は同主調(同主短調)・平行同主調(同主長調)という「構成音は違うけど主役が同じなので同じ世界って呼んでもいいんじゃない?」ってくらい近い調について紹介したよ。
さて、整理するよ。
- 〇〇メジャーキーから見た〇〇マイナーキーを同主調(同主短調)と呼ぶ
- △△マイナーキーから見た△△メジャーキーを平行同主調(同主長調)と呼ぶ
- 同主調の音階は元の調から見ると 3,6,7番目が♭する
ⅰ、ⅱ、♭ⅲ、ⅳ、ⅴ、♭ⅵ、♭ⅶ - 平行同主調の音階は元の調から見ると3,6,7番目が♯する
ⅵ、ⅶ、♯ⅰ、ⅱ、ⅲ、♯ⅳ、♯ⅴ - 同主調のコードは元の調から見ると
Ⅰm、Ⅱdim、♭Ⅲ、Ⅳm、Ⅴm、♭Ⅵ、♭Ⅶ - 平行同主調のコードは元の調から見ると
Ⅵ、Ⅶm、♯Ⅰm、Ⅱ、Ⅲ、♯Ⅳm、♯Ⅴdim、 - 同主調は元の調と主役は同じ、音階は近い
- 平行同主調は元の調と主役は同じ、音階は近い
こんなとこかな、ちょっと言葉だけでわかりにくい・イメージしにくい回だったかな?現時点で暗記とかする必要はないんだけど、これから先「CメジャーキーでFm…あ!同主調から借りたコードだ!」とか「CメジャーキーでAコード…!平行同主調に転調するのかな??」などなど具体的なことがどんどん出てくるので、「あれなんだっけ?」ってなったときに都度振り返ればいいと思うよ!
それじゃーね!
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補足
理論とのギャップ補足
平行同主調?
実はこんな言葉は旧来の音楽理論にはなくって、造語だよ。(恐らく僕が見てきた中ではなかったと思う。)旧来の音楽理論ではハ長調の同主調と言ったらハ短調だし、ハ短調の同主調って言ったらハ長調をさしていたんだ。要は長短反対方向の調を指す言葉だね。
なんで新しくこんな言葉を定義するかっていうと、これもまた昨今の長短入り乱れる曲調に適応するためだよ。
例えばCメジャーキー/Aマイナーキーの同主調は何って言われたら何と答える?Cマイナー/E♭メジャーキー?それともAメジャー/F♯マイナーキー?
そう、昨今の音楽は長調/短調入り乱れているから「同主調」って言い方だけだと「今が長調っぽいから同主短調のことかな?」「さっき短調っぽかったから同主長調のことかな?」って人によって指すものが変わっちゃうんだ。だからⅠをマイナートニックにした調なのかⅥmをメジャートニックにした調なのかを明確にするために言葉を分けたんだ。
上の図を見てもらうと分かると思うけど、赤丸をつけたⅠからの関係を見たときに、同主調は同主調関係の矢印1本だけ(真ん中の世界から見た一個下の世界へは矢印1つ)なんだけど、平行同主調は「平行調の矢印」と「同主調の矢印」の2本を辿らないといけないんだ(真ん中の世界から見た一個上の世界は矢印2つ)。
だから平行調の同主調という意味で平行同主調と名付けたよ。または、Ⅵmトニックという短調の世界を長調にした世界なので、同主長調って呼び方もしたりするよ。
それでは!