楽器の音がドレミの音名で語りかけてくる
世間の人が誤解している絶対音感の話と、僕の音楽理論構築のベースにもなっている絶対音感が教えてくれる音楽の秘密の話を書いてくよ。
ここから先、断定的に書く内容は、僕個人に起きてる事象として書くので、万人がそうだとか絶対音感の人みんながそうかってところまでは言及しないよ。これ、注意書きね。
目次
絶対音感の難点
前回の絶対音感と音楽の秘密~1.世間の誤解~で「絶対音感は心の事象、音が音名で語り掛けてくる」「完全音感は頭の処理、正確にどの音なのかを把握する」って話をしたね。
絶対音感っていうと、多くの人は完全音感のことを指してたり、「羨ましい!全部音階わかっちゃうなんて便利この上ない!」や「水槽の音と蛍光灯の音が不協和音だと精神的に苦痛なんでしょ?」なんて言われたり言われなかったり…
後者は実は絶対音感は関係ない(音名把握ではなく音と音の調和性の話なので)なんだけど、よほど相対音感が敏感な人でない限りないんじゃないかな?僕は集中しても気にならないくらいだよ。
じゃー絶対音感はいいこと尽くしなのかって言うと、実はもどかしかったり困ったりすることってのもあるんだ。
今回は、絶対音感の難点・困る点についてだよ。
相対音感(移動ド)の方との意思疎通
相対音感
前回さらっと書いちゃった相対音感、これは基準となる音からと比べて、聞いてる音までの距離がわかる音感だよ。
例えば、ソの音を鳴らして「今の音はドです、じゃーこれは?」と嘘ついてからシの音を聞かせる。このとき「ミ」って答えるのが相対音感。ソからシまでの距離=全音2つを、基準となるドから数えるとミになるからね。この、ソの音をドと呼ぶようなずらしたドレミのことを移動ドっていうんだ。
一方で絶対音感は「今のはシだよ、そしてさっきのはドじゃなくてソだったね」って答える。ほかの音と比べることなく音名を把握するんだ。この、ずらさないドレミのことを固定ドって言うよ。
つまり相対音感は文字通り相対的な音感、絶対音感は(他と比較しないという意味の)絶対音感だね。絶対=必ずとか正確って意味じゃないよ。数学とかで言う「絶対値」のように「単独で」「比較なしで」な意味。
誰しもが歌ったことのあるだろうチューリップの曲「咲いた~咲いた~チューリップ―のー花が~」はCメジャーキー(ハ長調)の中では
ドレミ―ドレミ―ソミレドレミレー
だよね。これをGメジャーキー(ト長調)で演奏すると固定ドでは
ソラシ―ソラシ―レシラソラシラー
になるけど、移動ドでは
ドレミ―ドレミ―ソミレドレミレー
のままなんだ。
音名⇔階名のコミュニケーション問題
もう問題は察してもらえたよねw 誰かが「さっきのソはもうちょっとゆっくり弾いてくれない?」ってキミに言ってきたとする…
ちょま、今キミの言ったソってソ?レ?
ってどっちかわからないよー!!!Gメジャーキーの中って固定ドのドレミも移動ドのドレミもあるし…!音名(固定ド)なのか階名(移動ド)なのかどっちなの~~~???
これはまぁ、絶対音感と相対音感が問題じゃなくて音名も階名もドレミって名前を使っちゃったってことが問題なんだけどね。そのしわ寄せが相対音感の人との意思疎通に出てきちゃうんだ…。
絶対音感の後、完全音感補正の前の罠
でもこれはまだ可愛いもんで、「移動ドで会話してるんだ」って思えば意思疎通は取れる範疇(常に変換するのが辛いけど)。だけど固定ドで会話しているときですら辛いという、もう1つ重要な?困る罠があるんだ。 具体例で説明するね。
C♯ハーモニックマイナーの罠
Eメジャーキー=C♯マイナーキーで一時的にスケールがC♯ハーモニックマイナーになったとしよう。元のEメジャースケールは
で、C♯ハーモニックマイナースケール(順序性関係なく)は
となり、灰色のシの音が半音上にずれた形だね。このスケールを例えばこんな感じで
ミ、レ♯、ド♯、…
と下行して次の音がド♯の半音1つ下の音だったとしよう。下図の鍵盤の1→2→3→4の順に音を鳴らすイメージだね。
さて問題です!4番目の音は何?いくよ、せーの!
…
…
…
シ♯!
…
…え?違う?ド?
ここが結構分かれるポイントで、コミュニケーションで困るところなんだ。事実だけ淡々と書くと
- 鍵盤のポジション的にはド
- 音楽理論としては(楽譜に書くときは)シの場所に♯つけて書く
- ちょっとした聴音アンケート(上記のようなサンプルを聞いてもらった)を実施した際にほとんどの人が聴こえる音をドと回答 ※母数は多くないよ、詳細公表は控えるよ。
なんだ。そしてここからは僕の感じた感覚だけど、周りの方々の意見的には
- ドと呼ぶ方が演奏面で優れてるよね、ぱっと認識しやすい
- ドなのになんでシ♯としなきゃいけないか感覚的にわからない
- シ♯と書くのはルール的な話であって、学んで知る話
という「最初にシ♯というアンサーが自然に出てこない」ような空気を感じたんだ。理論を無視(=ド)するか、理論ゆえに特別視(=シを♯)するか、って感じ。
じゃぁ、無意識下に語ってくる絶対音感はこの音をなんて言ってるかと言うと…
…
…
ミ、レ、ド、シー
なんだ。そしてその音に対して頭の中で「レとドは高い、シはハーモニックマイナー特性音の響きで♯してる」「つまりミ、レ♯、ド♯、シ♯ーだ」と補正がかかる。
そう、絶対音感はむしろ「シ」を教えてくれて、頭が「♯」へ補正しているんだ。この辺が凄く「楽譜ではシに♯をつけて表現する」という理論と一致していて、音楽理論はこの現象を踏まえて構築されたんじゃないかなって思ってる。
Cdim7の罠
もう一個、よくある話題(よくある??かな??)で例を挙げておくね。Cdim7の構成音の話がある。下の鍵盤の図の①、③、⑤、⑦だよ。①=ドから始まる構成音をキミならなんて表現する?
色々な意見を見て回ったけど
- 理論的にはド、ミ♭、ソ♭、シ♭♭(ダブルフラット)だよ
- 演奏する分にはド、ミ♭、ファ♯、ラがよくない?
- どっちでもいいよ
- 分かりやすさ重視でド、ミ♭、ファ♯、ラがいいよ
- でも正解はシ♭♭…
みたいな展開があった気がする。ま、必要とする立場次第(弾ければいい、スケールまで意識したい、など)なのでどの視点で会話したいかで使い分けるのがいいね。
絶対音感はこれをどう言ってくるのかというと…お察しの通り
ド、ミ、ソ、シ
と語ってくるんだ。そのあと♭の補正を頭がかける。どう?絶対音感という事象がどういうものなのか分かってもらえたかな?♯や♭なしの音の名前で教えてくれて、頭の中で♯や♭の補正をする、って感じだ。
まとめ
今回は絶対音感で困る点について書いたよ。端的に言うと、人とのコミュニケーションが取りにくいということ。それはどういった点だったかというと
- 移動ドと固定ドで同じ階名なのに音名が違う
- ドのことをシ♯と呼ぶなど、実音(周波数的な意味合い)と聞こえる音が異なる
といったところだよ。
次回は、逆に絶対音感が教えてくれることについて書いていくよ。実はここまでの記事でさらっと触れてるんだけど、「教えてくれないもの」が音楽の核を「教えてくれている」んだ。
それじゃーね!
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